中谷病院 院長 中谷裕司のコラム
今はあたりまえの予防接種の話 中谷方式?
当院の名誉院長である父中谷健二が、飾磨で開業した当時の話です。
父は、昭和41年この地で開業し、翌年飾磨小学校(当時日本一のマンモス校)の校医(内科)に任じられました。
当時の児童の予防接種では、1つの注射器に10人分のワクチンをいれ、針も変えずに廻し射ちをしていました。当時『血液は清潔である』と信じられていたからです。
父は大学院で内科・公衆衛生を勉強していたので、現時点では判ってないが血液を介する病気があり、針も変えない廻し射ちだとその病気が拡がると懸念しました。
翌年、ツベルクリンに使う注射器と針を購入するよう養護教諭を通じて姫路市教育委員会に申し出しましたが、予算がないと認められませんでした。そこで父は、校長先生と養護教諭・PTA会長と協議し、PTA会費から図書費を減らしツベルクリン用注射器と針を購入し、翌年より1人に対して1針にて注射をする方式を開始しました。いわゆる『1針1投法』の開始です。
当時の飾磨小学校の養護教諭は姫路市小・中学校の養護教諭会の会長をされており、養護教諭会の総会において、「飾磨小学校では校医の進言で今年から廻し射ちを止め『1針1投法』にした」と発表されました。その発表に全市の小・中学校の養護教諭が賛同され、姫路市教育委員会に進言されました。翌年より全市を上げて『1針1投法』になり、この件が兵庫県教育委員会に上がり、兵庫県下の全校がその翌年から『1針1投法』になりました。さらに当時の厚生省に上がり『1針1投法』はその翌年から全国に拡大しました。それをきっかけに『1針1投法』は『兵庫方式』と呼ばれる様になったようです。
以降、予防接種の注射の廻し射ちによる感染症(肝炎)は、激減したようです。
ちなみに最近になってやっと、予防接種の廻し射ちが、血液を介する病気(B型C型肝炎等)の感染源の一つであったと言われるようになりました。
小さい頃から、父にこの話を聞かされている自分にとっては、飾磨小学校が全国初の1針1投法は、兵庫方式ではなくまさに中谷方式!じゃないかと思っています。
平成21年10月22日

中谷病院 院長 中谷裕司